三諸杉 三輪伝承蔵仕込み

三輪伝承蔵

奈良県三輪の
歴史・文化・風土・技を伝承し、
町を醸す
三諸杉 三輪伝承蔵仕込み

酒造りへのこだわり

一、全量菩提酛造りで醸す

一、全量吉野杉の木桶仕込み

一、全量奈良県産米を使用

菩提酛造り、
そして今西酒造

奈良県三輪
奈良県は「清酒発祥の地」とされています。その由縁は現代の酒造りの基礎となっている「酒母」の概念が奈良県にて確立されたことにあります。 その「酒母」こそが、「菩提酛(ぼだいもと)」です。 菩提酛とは室町時代中期に奈良県は正暦寺で創醸され、現在普及している速醸酛や生酛系酒母の原型とされています。
奈良県三輪
現存する日本最初の民間の酒造技術書「御酒之日記」によると乳酸発酵酸性液である「そやし水」を製造し、この水を酛の仕込み水として利用することが特徴、と記されています。そやし水は、水に生米を浸漬し、自然界に生育する乳酸菌の力を活用し、乳酸発酵を促すことで製造されます。
酛仕込みにその乳酸水(そやし水)を使用することで、一般細菌の増殖を抑え、酵母の増殖を促し、アルコール発酵を行うという実に巧妙で合理的な醸造手法です。

吉野杉の木桶仕込み

吉野杉の木桶仕込み
三輪の地は、太古より杉と共に歩み、当蔵は、三輪山を覆う杉の恩恵を受け、清らかな水と米に恵まれながら、360年以上にわたり酒造りを続けてきました。杉への感謝と敬意を込め、蒸米には吉野杉の甑を用い、発酵には全量吉野杉の木桶を使用しております。
吉野杉を使用する理由は、その木材が最高品質であることに加え、三輪と深い縁で結ばれているからです。
清酒のはじまりは、奈良県
明治時代に発行された技術書「吉野林業全書」によれば、吉野杉は1500年代に三輪山の杉が移植され育てられてきた、と記されています。 江戸期以降は伊丹・灘五郷など上方酒造業の発展に伴い、吉野杉は木桶・樽用の酒造用材として隆盛を極めました。 吉野杉が酒造りに適している理由は、木そのものの香りが良いことに加え、幹の年輪幅が狭く節がないため、木桶に加工しても酒が漏れにくい点にあります。
清酒のはじまりは、奈良県
これは、密植と間伐を繰り返し、長い時間をかけて一本の木を育てるという、林業家の卓越した技によるものです。
私たちは、吉野杉への感謝と、それを育てる林業家の方々への敬意を込めて、酒を醸しています。

さらに、吉野杉の木桶で発酵させることで、木由来のタンニンや棲みつく微生物の働きにより、複雑な風味と香りが加わります。その結果、より奥深く、余韻の長い味わいへと仕上がります。

奈良県産米を使用

奈良県三輪
農家の高齢化や労働力不足により、耕作放棄地の増加が社会問題となっています。当蔵では、酒造りを通じて地域と共に歩み、この課題の解決に貢献したいと考えています。日本の原風景を守り、次世代へと受け継いでいく——その想いのもと、自社田での米作りや契約農家との協力を積極的に推進しています。
三輪伝承蔵で使用する酒米には、奈良県産米のみを厳選し、地域の恵みを生かした酒造りを行っています。
奈良県三輪
精米の過程で生じた米粉は、包装紙・袋等の資材として再利用しています。江戸時代には当たり前だった、米を糊や紙に活用する文化を現代に再構築し、持続可能な循環型社会の実現を目指しています。

酒蔵

奈良県三輪
奈良県に脈々と受け継がれる伝統建築技法を生かし、酒造りの歴史と響き合うように設計されました。

外壁には、三輪に都があったとされる弥生時代から伝わる日本の伝統工法「板倉造り」を採用。この工法は、厚板を落とし込んで組み上げる構造で、高い耐久性・耐震性を誇ります。
奈良県三輪
蔵内部は、奈良を代表する建築技法「校倉造り」の要素を取り入れました。吹き抜け天井や什器にこの技法を用いることで、木材の特性を生かした自然な調湿効果を持つ空間を生み出しています。
さらに、屋根は深い軒の出を保つために中世の禅宗様建築を象徴する「扇垂木(おうぎだるき)」と社寺建築でよく使用される桔木(はねぎ)工法を融合させました。
この優美で精巧な構造は、日本の伝統建築の美しさを際立たせています。
奈良県三輪
この建築技法は、菩提酛造りが誕生した時代と深い関わりを持ちます。中世、日本の酒造りは寺院醸造を通じて大きく発展しました。同時に、宮大工たちは後世に受け継がれる建築技術の礎を築いていきました。私たちは、当時の僧侶や宮大工たちが生み出した文化への敬意を込め、この伝統的な技法を採用しました。

また、建材にはすべて奈良の豊かな森が育んだ吉野杉を使用。地域の自然と調和する酒蔵として、ここ三輪の地に息づいています。
悠久の時を超えて受け継がれる建築の技と、伝統の酒造りが響き合いながら、三輪伝承蔵は新たな歴史を紡いでいきます。

「三輪伝承蔵」に
込めた想い

私は、奈良・三輪の地が大好きだ。
歩けば歴史にあたる——世界中を探しても、こんな場所は滅多にない。

幼少期、三輪で過ごした日々。
近所のおばちゃんに可愛がってもらい、初市の賑わいに胸を躍らせ、友人たちとカブトムシを追いかけた夏の日々。

その後、中学・高校・大学、そして社会人生活を大阪・京都・東京で過ごし、故郷を離れた。
しかし、2011年、先代の急逝により突然家業を継ぐことになり、十数年ぶりに三輪の地へ戻ってきた。

そのとき、私は 「三輪のすごさ」 をあらためて知った。

何気なく歩いていた道が 日本最古の道 だった。
子供の頃はただの神社だと思っていた場所が 商売発祥の地 だった。

幼い頃には気づかなかった三輪の歴史・文化・風土の奥深さに、私は一気に引き込まれ、休日ごとに奈良の各地を巡るようになった。

しかし、一方で、かつての賑わいが失われつつあることも感じた。
かつて子供たちの声が響いていた公園は静かになり、商店街の店主たちは「商売は厳しく、子どもには継がせられない」と嘆いていた。

こんなに素晴らしい場所なのに、もったいない。

三輪という地が持つ本来の魅力を、もう一度輝かせることはできないか。
酒蔵として、この町の力になれることはないのか。

そう考えたとき、私はひとつの答えにたどり着いた。

三輪伝承蔵
・三輪の地に受け継がれた歴史・文化の語り部となり、後世に伝えたい。
・地元の自然と共に生き、三輪の風土を活かした酒造りをしたい。
・奈良だからこそ磨かれた酒造りの技を、次世代へとつなぎたい。
・人の縁を結び、町の賑わいを生み出す一助となりたい。

三輪伝承蔵の酒造りは至極の液体を醸すことにとどまらない。

地域の歴史・文化を伝承し、自然と共生し、人の縁をつなぐ——そのすべてが融合して初めて、真に完成する。

私たちは、酒造りの原点であり、神と人が交わる奈良・三輪の地で酒の本質を問い続け、伝統と革新が響き合うこの蔵から、新たな歴史を紡ぎます。
十四代目蔵主
今西将之

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